青蓮院ブログ

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3月護摩のお話

3月に入り急に春らしくなりましたね。

昨日、一昨日と満月に近い月夜でした。
お寺の境内は暗いので、月明かりがすごく明るく感じます。

東日本大震災から1年。もう直ぐ3月11日です。

3月11日、午後2時46分、亡くなられた方の追悼と、被災された方の復興を祈願して、近畿36不動尊霊場会 同 役行者霊場札所会、合同の柴燈護摩供を大阪埠頭舞洲アイランドで厳修します。

青蓮院から、ご予約の皆さんはバスでご一緒に向かいます。

この1年被災された方々のお苦しみは筆舌に尽くせないと思います。

地震、津波、そしてあの原発事故。

ボランテイアが延べ100万人。義捐金が5000億円を越えたとの報道がありました。
集計に入らない人の数やお金を考えると本当に日本中、世界中から多くの支援が差し伸べられていますが、復旧は困難を極め、放射能との戦いは30年とか、気の遠くなることです。

これは見開き2ページの新聞の写真です。
3月6日付けで、環境省が広告したものです。約10m程の高さの災害廃棄物の壁が続いている石巻市の写真です。

廃棄物は通常の量の11年分から19年分で、緊急的に架設焼却炉を作り、24時間連続運転をしていても間に合わず、全国にその処理の協力を呼びかける内容の広告です。

しかし受け入れ自治体は、放射能の被爆を恐れて受け入れが進んでいないことは別の報道で知らされています。

被災地の苦しみは十二分に分かっていても、自分達の安全を犠牲にしてまで協力はできないという本音の表れです。

お寺の職員の娘さんが千葉の我孫子に新居を建てて1週間後、地震がおきました。
我孫子は放射能の数値が高く、所謂ホットスポット。産まれたばかりの幼児への汚染を恐れて京都の実家に直ぐに避難して未だに帰れないとのことです。

もちろん自主避難ですから、一切費用は補償されないのですが、このほんの一例を始めとして日本中に振りまいている迷惑と被害は想像を絶します。

原発が安い電気ということかもしれませんが、このことだけでもお金に換算できない極めて高い電気だと思います。
現実には被害の補償。放射能徐染費用。事故の完全収束費用。既存原発の補強。等々全ての費用を合計すれば、恐らく反って割高かもしれません。

宗教界は殆んど全ての宗派が、宗議会で脱原発の決議をしました。

しかし今のところ、具体的な活動をしている分けではありません。

私は、政治的に中立な宗教界(公明党は例外ですが)が手をたずさえて、脱原発に向けた国民的な運動をすすめていく時であると思っています。

仏教は自分のことより、人のために何ができるか。が教えの根幹にあります。
その意味で政教分離という教条を越えた道を開くことに何等迷いを感じることはないと思います。

日進月歩の科学技術の進歩。日本の先端技術の開発能力をもってすれば、そして国家の存亡をかけて、国をあげて取り組めば、原発に代わる安全で安価な発電の開発は可能になると思います。

そしてその成果を外国に売って世界中から、原発を駆逐できることにもなります。

仮に脱原発を日本だけが単独で進めた場合、日本の心配は無くなっても、もし中国で第二の福島が起きたら、風下の日本は全ての機能が麻痺するのではないでしょうか。
中国の新幹線の事故を思い起こすと、起こり得ることと考えなければならないと思います。

ですから、原発より安くて安全な発電方法の開発に国をあげて邁進しなければ、私達に平安はないかもしれないのです。

今一生懸命進めている、東山山頂の将軍塚の大護摩堂の建設後、仏教が積極的に現代社会のかかえる問題の解決に向けた活動を、私はその場所から発信していきたいと思っています。

強い力をお持ちの青不動明王にお参りいただき、それぞれ皆さんの諸願成就を念じていただくことに加え、3月11日を迎えるに当たって、このようなことにも思いを込めて今日の護摩供で願っていただきたいと思います。

慈晃拝。

カテゴリ: 門主のお話 | 2012年03月08日 | コメント(1) | No Trackbacks

2月護摩のお話

朝は、晴れておりましたが、今は雪がちらついています。

2月の満月護摩をお勤めします。

最初にご案内をしました。
3月11日に東日本大震災で亡くなられた方の追悼と、復興を祈念するため、大柴燈護摩供を、近畿36不動尊霊場会と役行者霊蹟札所会、合同で、大阪の舞洲スポーツアイランドで行います。

午後2時開式。入場は無料です。雨天決行。2時46分点火。お申し込み自由ですが、お炊き上げの護摩木代(500円)は全額義捐金として現地へお送りします。
各山の山主または僧侶66人が出仕の他、諸役の行者が所作を行い、火柱も高く燃え上がり追悼と復興に向けて祈りをささげます。
66寺の内訳は各霊場会が36寺あり、重なる6寺があるため総寺院数が66寺となります。
どうぞお気軽にご参加ください。

豪雪により全国各地でお困りの方がたくさんいらっしゃり大変お気の毒です。
東日本大震災の被災の方々も雪や寒さでご不自由のこととお察しします。

パナソニックが7800億円の赤字。トヨタは前期2兆円の黒字から1500億円の赤字転落見込みとのこと。
円高の影響がいよいよ深刻になってきました。

輸出産業が軒並み赤字、税収は当然ガタガタと減って、消費税を幾ら増税しても、このままでは日本は沈没するのでは。

その上デフレ。
日本は100円で買えるものが益々安く買えるようになり、アメリカはいままで1ドルで買えていたものが買えない。

このデフレ、物を買う側には都合がいいが、ものを生産し売る側には極めて不利。
物が安くなったからといってそれ以上に消費が増大する訳ではなく、結局全体では経済は縮小沈滞。
ゼロ金利の時代が長すぎて、お金がだぶつき、行き場がない。だぶついたお金で銀行は国債を買うしかない。
このだぶついたお金が、世界で一番の国債依存の日本財政を支えている。

もうどうしようもない苦るしみの極みだと思います。

天台宗の開祖 伝教大師最澄は19歳で比叡山に上り、修行に入ります。
その折、書き記した「願文」が残されています。

漢文の簡潔な文章ですが、その決意表明は壮絶なまでの気迫に満ち、その若さでよくぞここまでと驚き且つ敬服するところです。

その出だしの文は、悠々たる三界は純ら(もっぱら)苦にして安きこと無く・・・・とあり
はるか限りないこの世界は、ただ苦しみばかりで安らかなことは無い。と書き出され今も昔も人の営みに変わりはないのです。

そして自分は愚の中の極愚、狂の中の極狂、塵禿の有情、(じんとく=ごみのような外見だけの僧侶)(有情=人)
底下の最澄(ていげのさいちょう)、だとしています。

仏の知恵で衆生を救うレベルからすれば、自分は愚かで狂っていて、最低以下のどうしようもない存在であると、心の底から感じられたことがほとばしっていると思います。

願文ではそれから、仏の知恵を得るまでは全ての現世の冥利を受けず、仏の知恵を得たならば、全てを衆生にささげるとされています。

19歳の若き最澄の決意表明です。

この苦しみの現世。日本全体もそうですが、個々の皆さんの日々の営みに覆いかぶさる苦しみを救う道。

最澄は自ら仏の知恵を得て、多くの人々の苦しみを救いたいと願いました。

私は最澄とは比較にならない、底下のさらに下の下であります。
私が皆様のためにできることは一心にお不動様に祈り、救いをいただき、ご加護をいただき、お導きいただくことです。

皆様と共に祈りたいと思います。
慈晃 拝


カテゴリ: 門主のお話 | 2012年02月08日 | コメント(0) | No Trackbacks

平成24年初護摩のお話し

平成24年の初満月護摩をお勤めしました。
 年が改まりましたが、世界の状況に変わりはなく、極めて厳しい状況が続いています。

 振り返れば昨年は最悪の年でした。
 東日本大震災、原発の事故、台風被害、タイの水害、ギリシャ、スペインに発するヨーロッパの金融不安。
ドルの信認の著しい低下、未曾有の円高。世界中が行き詰り、出口が見えない不気味さ。年が改まっても状況は全く変わらないばかりか、更に悪化すると予想する経営者が多く、心配が絶えません。

 さらに震災と原発事故からの復興には途方も無い年月を要すること、このような激変の年を少なくとも私は経験していません。

 しかも現在、政治に力がなく、党利党略の明け暮れ、真に日本の将来を見据えた長期的視野の欠如。

 特に円高に対する危機感の欠如は著しく、既に事態は当たり前のようになりつつあることが恐ろしい。

 タイの水害であれほどに日本の企業が海外に流出していることを思い知らされましたが、この円高で産業の空洞化は一層進むと思われます。近い将来日本の経済基盤は根底から揺らいでいくのでは。

 世界に対し、ただ従順にこの事態を受け入れる日本の政治家。

 一方で橋下さんが大阪市長戦の最中、既存の全ての政党が反橋下であったにも拘わらず、当選後は、「てのひら」を返して支持にまわる定見の無さ。日本の政党とはこんなにもお粗末なのか。

 終戦後の窮乏に近い危機的状況に、今の日本はあると思います。

 この事態から脱却するのは、政治家や政府まかせでなく、戦後の復興を果たしたあの凄まじい情熱と力を、国民が再び蘇らせる以外道はないと思います。

 それに加えることは青不動尊のお力をいただくことです。

 東山山頂に、旧武徳殿「平安道場」の木造大建築を移築再建し青不動大護摩堂を建立することは、単に建物の保存ではありません。
 その場から仏教の教えが現実の世に具体的なよりどころとなるよう発信の拠点として行くことが、本来の願いであります。

 多くの国民が脱原発の思いを共有しているだけで、なす術がないのではないでしょうか。
 日本の将来は党利党略や、政治家に任せておけない段階に来ているように思います。
 
 そして様々な利害を越えて活動できるのは、宗教界ではないかと考えるようになりました。

 将来そのような活動の拠点に、例えば、脱原発の国民運動の拠点に青不動大護摩堂が役割をはたしていければと思っています。

今日の初護摩。
 ご参拝の皆様の今年の願いを成就するため、しっかりとお勤めいたしました。

 今夜の京都の満月すばらしくきれいです。
                                        慈晃 拝
                                     

カテゴリ: 門主のお話 | 2012年01月09日 | コメント(2) | No Trackbacks

12月護摩のお話

平成23年の納め護摩をお勤めしました。

今夜は皆既月食です。9時45分から始まり午前1時18分に終ります。23時31分がピーク
となります。
月食。現在半分ほどですが、かなり冷え込んできた初冬の空に少し不気味な姿に見えました。

今年は最悪のことが続き過ぎました。天変地異の大変異、締めくくりが皆既月食とは。
大きな宇宙の営みのうねりが変調を示しているのでしょうか。

東日本大震災 大津波に原発事故。放射能除染と事故の完全収束までは長い茨の道が。
和歌山の水害、タイの洪水。

そればかりか、ギリシャ、スペイン、から始まったユーロ圏の金融経済不安。
この事態にも拘わらず、イギリスやドイツの思惑から、一致団結した解決に至らない
もどかしさ。

円高は依然、高値止まりのまま。政府や日銀の無力さをつくづく感じます。

私は、日銀券を大規模に増刷して、そのお金を震災の復興にあてるのが
一番良いと思うのですが。
円の価値が低下して、円安にもなり、市中のお金の循環がよくなり景気浮揚と
税収の復活、ゆるやかなインフレ。
これこそベストの選択だと思うのですが。
とにかく縮小、削減、撤退、解雇、防戦、守り、いやな言葉です。

日銀券の大増刷。どうしてやらないのか。不思議でしょうがないのですが。

良い事の少ない今年でした。

昨日やっと第三次補正予算と、復興財源確保法、復興庁創設法 が国会で可決
ようやく本格的な復興へスタートはしましたが、なんと遅かったことか。

震災後9ヶ月を要しました。
関東大震災後には、後藤新平が1ヶ月で多くの反対を押し切って復興院を立ち上げ
即刻対応したことと較べ、あまりにも遅く驚きと怒り(煩悩の1つですが)
と情けなさでいっぱいです。このもどかしさで狂いそうです。
政党政治の限界を感じます。

被災された方々の空しさ、怒り、は極限だと思うのですが、もっとその声を大きく
しませんか。

天変地異を鎮めるご本尊熾盛光如来、その化身の青不動明王。日々一生懸命にお祈り
しています。今日は特に強くお護摩をお勤めしたいと思います。

われわれ、置かれた立場はそれぞれ別々。思い、願い、悩み、も千差万別でしょう。
しかし多くの方が大小様々などうしようもないことを、抱えていらっしゃると思います。

ご自身のお身体のこと、ご家族の介護のこと、会社の経営のこと、孤独や寂しさ。
原発事故で避難を余儀なくされている方。
ご自身の努力で如何ともし難いことをお持ちだと思います。

このような時、これはまさに今の日本の現実だと思いますが、私はこの事態の中では、
やるべき努力をとことんやり尽くした上で、それでもどうしようもない現実に対して、最後はお不動様へお任せする、その無限のお力に委ねることしかないと感じています。


このような難しい時になってしまいましたが
来年1月9日の初護摩供のご案内に、東山山頂、将軍塚大護摩堂建立の建立資金の一部へのご寄進 お願い書を同封しております。

どうかご協力のほどよろしくお願いいたします。

良いことの無かった今年も暮れようとしております。
このような難しい時、お不動様をしっかりお祀りし、お力を頂き、なんとか
年を越せることに感謝いたしましょう。

良いお年を。

月食が進み、ほぼ皆既状態です。全体に赤くにじんではいますが。
 
お休みなさい。

カテゴリ: 門主のお話 | 2011年12月10日 | コメント(1) | No Trackbacks

11月護摩のお話

11月護摩。今日の京都地方、雨があがりすばらしい満月です。

これを書くにあたり、10月護摩の話を読み返しました。

世の中の深刻な事態。
その事態はさらにイタリアの危機とTPPが加わり一層の深刻さを増したように思います。
ぜひ10月の話を読み直していただけますか。
私の切実な思いですので。

 TPPの問題は日本の農業の根本問題です。補助金、補助金といった、いままでの政治姿勢から脱却しなければ真の日本の農業の再生は不可能だと思います。
 又、ただ反対、賛成という単純な主張の衝突は、減反政策にあったような保護や補助金の悪循環つまり局所療法につながるのではないかと、懸念します。

 昨日、稲盛京セラ財団の「京都賞」の授賞式と晩餐会にお招きを受け参列しました。

 今年は、アメリカ人のジョン・ワーナー・カーン博士のアロイ材料工学への多大な貢献。
ロシア人のラシッド・アリエヴィッチ・スニヤエフ博士の宇宙背景放射揺らぎ理論と高エネルギー天文学への多大な貢献。
坂東玉三郎氏の歌舞伎を中心にした舞台芸術の諸ジャンルを越えて華麗な美の創造者、
の3名の方がそれぞれ賞金5千万円を授賞されました。

 「京都賞」の理念は、稲盛理事長の「人のため、世のために役立つことをなすことが、人間として最高の行為である」とのお考えに基ずき、国内外の科学と芸術に著しく貢献した人々に贈られている賞です。
 その理念は天台宗の開祖、最澄が説かれた、己を忘れて他を利することこそ、人の目指す道であるとの教えと全く同一であります。
 この教えが尊いことであると同時に、如何に実現が難しいか、日々わが身を顧みて反省するところでありますが、稲盛理事長の27年に及び80名を越える方へ贈り続けられていることにあらためて感動と畏敬の念を痛感いたしました。

 坂東玉三郎氏の授賞後のスピーチでの次の言葉が非常に印象に残りました。
 氏はご承知のように、歌舞伎界以外の出身にて幼少の頃から先代の師匠に弟子入りして弛まぬ精進の結果、五代目を襲名されましたが、師匠の日々の教えの中で一番大切にしていることは
 「舞台に立って観客に良く見せようとするな。その役柄に徹底的になりきることだけを考えよ。」
 と云われ、それを実践してきたと語られました。

 
 すばらしい師匠の教えだと思います。
 またその事を謙虚に話された氏の姿勢に心を打たれました。
 
 自分のなすべきことの一番重要なことに真剣に、一心に邁進すること。いやしくも人の評価を受けるためや、何かの利益のためにすることがあってはならない。ということだと思います。

 改めて今日以降、真剣に護摩のご祈祷をお勤めしなければと思います。

カテゴリ: 門主のお話 | 2011年11月11日 | コメント(1) | No Trackbacks

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